スピノザ『エチカ』という著書をご存知でしょうか??
彼は、私たちが感じるいろいろな感情を、実はたった3つの基本的なものに分けられると考えました。
今回は、スピノザの『エチカ』第三部「感情」についてご紹介します。
この記事を読み終える頃には、世界の見方が大きく変わるかも!?是非最後までご覧ください!!!
スピノザってどんな人?
そもそもスピノザとは、一体何者なのでしょうか??
バールーフ・デ・スピノザ(1632-1677)は、オランダの哲学者であり、西洋哲学史の中でも異端的でありながら革新的な思想を展開したと言われています。彼は、主著『エチカ』の中で、当時主流であったキリスト教の思想に挑戦し、神や自然、そして人間の感情や自由について独自の見解を表しています。
もう少し詳しく言うと、
彼は「神」と「自然」が一体だと考え、すべてのものは決まった法則の元にあると主張しました。
要するに、すべては必然だというのです。
そしてスピノザは、私たちが感じる感情もまた、必然的なものだと言っています。
つまり、感情は偶然ではなく、誰にでも共通して起こり、一定の法則があるというのです。
▼スピノザのエチカが気になる方は是非一度読んでみることをお勧めいたします。
感情はたった3種類?
スピノザによれば、私たちが感じる感情は、基本的に次の3つに分けられます。
根本的には3つしかないというから驚きです。
①喜び
これは、自分の力が強くなったと感じるときに生まれる感情です。
たとえば、美味しいものを食べて幸せな気持ちになったり、何かに成功したときの満足感がこれにあたります。
②悲しみ
逆に、自分の力が弱くなったと感じるときに、悲しい気持ちが生まれます。
大切なものを失ったときや、うまくいかずに落ち込むときがその例です。
③欲望
これは、自分の力をもっと高めたいと願う感情です。
何かを手に入れたい、もっと頑張りたいという気持ちが欲望にあたります。
注意すべきなのは、必ずしもプラスの欲望だけではありません。
ここでは単に「あるものを欲する」という、価値が付与されないものとして語られています。
この3つが、すべての感情の元になっているとスピノザは考えました。
複雑な感情はどう説明するの?
一見、私たちは喜びや悲しみ、欲望以外にも「愛」や「妬み」「怒り」など、いろいろな感情を持っているように感じます。
でもスピノザの考えでは、これらは基本の3つから派生したものだと説明しています。
愛とは?
「愛」という感情は、実は「喜び」が元になっています。
何か(または誰か)が自分に喜びをもたらすと、その対象に対して自然に「愛」を感じるといいます。
たとえば、家族や友達と一緒にいると心が温かくなり、笑顔になれる。これが愛です。
対象というと難しく聞こえるかもしれませんが、「愛」は、相手がいないと成り立たないという意味です。
喜び×相手
のセットで初めて「愛」が生まれると思ってください。
憎しみとは?
「憎しみ」は「悲しみ」が元になっています。
誰かが何か良いことを手に入れたとき、自分がその恩恵を受けられていないと感じます。
そのとき悲しい気持ちから「憎しみ」が生じることがあるというのです。
悲しみ×相手
というわけです。
ここでお気づきの方もおられると思いますが、愛と憎しみは正反対の関係にあります。愛は相手がいることで、自分が喜びを見出だしている状態です。
反対に憎しみは、相手がいることで自分が悲しみを感じている状態です。
ということは、愛は憎しみに変わり、憎しみは愛に変わるということがわかります。
その他の感情
その他の感情も、基本となる喜び、悲しみ、欲望の組み合わせや変化したものだと考えられます。
①「好意」と「怒り」
「好意」とは、親切にしてくれた人に対する「愛」です。反対に「怒り」とは、害悪を加えてきた人に対する「憎しみ」です。
ここからわかる面白いことがあります。例えば、「愛」も「憎しみ」も相手を伴うので、「好意」や「怒り」は相手がいないと成立しないことになります。
「なんか腹が立つんだよな」という状態の場合、実は特定の相手がいるというわけです。
②「希望」と「恐怖」
「希望」は、未来に対する喜びの予感です。「希望」は喜びの一種なんですね。
一方「恐怖」は、未来に対する悲しみの予感です。
大学受験を考えるとわかりやすいかもしれません。
受験までまだ日数に余裕があるときは、「大学ってどんなところだろう?」「あの学部にいきたいな」「どんなサークルに入ろうかな?」といった「希望」に包まれています。
しかし、受験が近くなるにつれ、「落ちたらどうしよう」「浪人は嫌だ」など、「恐怖」に変わります。これは、未来に対する喜びの予感が、悲しみの予感へと変わったことを意味します。
③「同情」と「ねたみ」
「同情」は、他人の幸福を喜び、また他人の不幸を悲しむように人間を動かす「愛」であるとされます。
つまり、根本的には「愛」です。愛をベースに、他人の幸福を喜んだり不幸を悲しんだりするということです。
愛=喜び×相手 なので、
「同情」は、喜びを伴う相手に対し、喜びや悲しみを感じているということなのです。
反対に、「ねたみ」は、憎しみをベースに、他人の幸福を悲しんだり、不幸を喜んだりしているといいます。
よって、「ねたみ」は根本的に「憎しみ」(悲しみ×相手)です。
「同情」と「ねたみ」は、裏表の関係だということです。
④「自己満足」と「謙遜」
「自己満足」は、自分の力を捉えようとした時に生じる喜びです。
そして対になる「謙遜」は、自分の無力や弱さを捉えようとしたときの悲しみです。
ここからわかるのは、「謙遜」で感じる悲しみが喜びに変われば「自己満足」になるということです。
「私なんて全然仕事ができなくて」という新人社員が、数年後に「結構いい仕事をしてるんじゃない?」と変化するのは、自分の捉える能力から感じる悲しみが、喜びに変わったことを意味します。
ただし自分自身のことしか考えていないので、それが相手にとっても「いい仕事」かどうかはわかりません。自他ともに認める仕事ぶりであれば、成果と考えてよいでしょう。
このようにして、いろいろな感情はすべてこの3つから生まれるとスピノザは解釈しています。
日常でどう活かす?
スピノザの考え方は、ただ哲学的な理論にとどまらず、私たちの日常生活にも役立ちます。
感情を一次感情(喜び、悲しみ、欲望)と、それから派生する二次感情に分けることで、今自分が何を感じているのかをより正確に理解できるようになります。
たとえば、「なんだか嫉妬しているな」と感じたとします。
そのとき、「もしかすると、本当は悲しみがあるのかもしれない」と自分自身に問いかけることで、感情の根っこに気づくことができます。
こうした自己理解は、自分の本心と向き合い、より健全な行動や対人関係を築くための大切な手がかりになります。
スピノザは、自分の抱く感情を正しく理解することで、コントロールしやすくなると言います。
そして、感情をコントロールすることで幸福に生きることができると考えました。
先ほどの「怒り」に関していうと
・自分は誰に怒っているのか
・本当にその相手は自分に害悪を加えてきたのか
・悲しみを抱く程気にかけるべき相手なのか
などの点検項目を活用すれば、「怒り」をコントロールできるのかもしれません。
まとめ
スピノザの『エチカ』では、私たちが感じる複雑な感情を、喜び、悲しみ、欲望という3つの基本的な感情に還元して考えています。
①喜びは、自分の力が高まるときに感じる。
②悲しみは、自分の力が低下する時に感じる。
③欲望は、自分の力をさらに高めようとする本能的な動きです。
これらの一次感情から、愛や妬み、希望、恐怖など、私たちの日常で感じるさまざまな感情が生まれているのです。
スピノザの考えを通じて、私たちは自分の本心に気づき、感情をより深く理解することができます。
これにより、自分の感情をうまくコントロールし、より良い人間関係や健全な生活を築くためのヒントを得ることができるでしょう。
スピノザの感情論は、難しい哲学の理論に見えますが、実は私たちの日常にとってとても実用的な知恵です。
感情の基本を知ることで、自分の本当の気持ちを理解し、より豊かな人生を歩むための手助けとなります。
今一度、感情について深く考えてみると、心の中にある大切なメッセージに気づくかもしれません。
【募集中】皆さんの感想やご意見など、是非コメントやメッセージに記載ください!
▼スピノザのエチカが気になる方は是非一度読んでみることをお勧めいたします。