帰納法と演繹法を例で解説!思考を整理するコツをご紹介!

帰納法や演繹法という、論理学や数学の推論法の一つを皆さんはご存知でしょうか。

数学と聞くと、頭が痛くなる方もいらっしゃるのかもしれません(私もわりとそっち側です笑)が、そんなに難しいことはありません。

しかも、知らず知らずのうちに使っていることも多々あります。

そして、「最近仕事がうまくいかないなぁ」というときほど帰納法ばかり使っていたり、反対に演繹的に思考しすぎて「周りはわかっていないやつばっかりだ!」とストレスが溜まったりしていることがあります。

今回はそんな帰納法と演繹法に焦点を当ててお話していきます。

セオリーを取り入れてしまえば仕事やプライベートにおいて大変便利ですので、是非ゆっくりお読みいただけたら幸いです。

1.帰納法とは
2.演繹法とは
3.新任ほど帰納的に、ベテランほど演繹的になる
4.両者の落とし穴
5.どちらが必要か
6.僕の失敗は帰納と演繹で説明できる
7.思考を整理する
8.まとめ

1.帰納法とは

帰納法とは、具体的な観察や実例から一般的な法則や原則を導き出す方法です。

また、個々の数値や出来事を観察し、それらのパターンや共通点を見つけ出して一般的な法則を導くことが帰納法の特徴です。

例えば、「春には桜を模した広告が増える」

    「春は花見をする人が増える」

    「冬の終わり頃から桜がテーマのお菓子をよく見る」

以上のことから、「春は桜に関連した商品が売れる」と言える。というような感じです。

一言で言えば、「共通点を見つける」です。

2.演繹法とは

演繹法とは、一般的な原則や法則から特定の事例や結論を導き出す方法です。
※具体的な例や事実から一般的な法則を得る帰納法とは逆のアプローチです。

例えば、「人は疲れると甘いものを欲する」という前提に、

「上司は今日仕事が多くて疲れている」という事象を当てはめると、

「上司は甘いものを欲している」という結論が見いだされるというものです。

三段論法に近い考え方ですが、厳密には演繹法≠三段論法だそうです。
(三段論法とは、ある事実やその前提となる正しい情報を起点として、推理を重ねて結論を導き出す手法のことです。)

しかし、ほぼ一緒だと思っておいて問題ありません。

帰納法の対義語が演繹法だと知っておくと思考を整理しやすいかもしれません。

3.新人ほど帰納的に、ベテランほど演繹的になる

新人に近い方は、その会社での仕事の経験が少ないはずですので、とにかく経験を積む段階だと言えます。

これって、いろんな経験から共通の公式を見つけていって、次に起きた事象に対応しようとしていることになるのですが、お気付きでしょうか。すなわち帰納的に考えているんです。

では、ベテランの方はどうでしょう?

ある程度経験とキャリアがあり、ベテランになるにつれて、「昔そんなことがあったな」と言えることが増えてくるわけです。

「あんな嫌な思いをしないために今手を打っておこう」とできるのがベテランの強みです。
多数の公式を身にまとっている状態ですね。

これから起こる事象には動じることなく、ありったけの経験を活かせるのがもはやズルいレベル。
これは、今ある公式に事象を当てはめて結論を出しているわけなので、演繹的に考えていることになります。

4.落とし穴

新人とベテラン、それぞれには落とし穴があるんです。

新人の場合、公式がないのでとにかくしんどいですよね?
「どうすればいいの?」「仕事に押し潰されそう」となるのは、毎回新しいことに出会うがゆえに概念形成が追いつかない。これが大変な一因です。しかし、もっと大きな落とし穴があるんです。

それは、属する組織の中でしか公式を生み出せないこと。

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こんな現象が起こるのが帰納法の特徴です。
自分の接することのできる世界からしか学べないのです。

ベテランの場合はというと、演繹的に生み出された公式が縛りになってしまうことです。

いわば頭のかたい人ですね。確かに知識は強い。
しかし、目の前の事象を知識に当てはめようとしてしまう側面は否めません。これらが帰納と演繹の落とし穴だといえます。

5.どちらが必要か

人は帰納からスタートし、演繹的に思考することを覚えていきます。
そして、どちらか一方が得意だから優れているとは言えません。

新井(2010)は、「人間は、経験による帰納を経ずして純粋に演繹するこおは決してない(p.202 )」と述べ、例として「計算ばかりやっていたからといって計算機を発明できる人になれるわけではない一方、ろくに計算もせずに計算機を発明することも、また、できないp.202)」と示しています。

このことからも、どちらが「良い」なんてことはありません。どちらも必要なのです。
大事なのはそのバランス。

先ほど見たように、新人は帰納に、ベテランは演繹に寄りすぎる傾向があると言えるのです。
ならば、寄りすぎないように調整すると良いのではないかというのが本稿のひとつの提案です。

具体的にどうすればいいか。

新人の方は、読書をすることが手っ取り早いと思います。
本はあらゆる事象をあらゆる角度から捉えていますから、ベテラン顔負けの知識がそこにはあります。

ただ経験が少ない分、具体で考えづらいのが難点ですが、それはその時点での経験と照らし合わせれば十分ではないでしょうか。

逆にベテランの方は、現場に戻ることだと思います。
現場に戻るというのは、昔のように動いてみるということ。

どうしても若い人がやりがちな活動を敢えてやってみることで、感覚を取り戻せるのだろうと思います。若手からしても、自ら動くベテランほどかっこよく映り、全体の士気も上がるというおまけ付き。

大切なのは帰納と演繹のバランスです。ハイブリッドでやっていきたいですね。

6.僕の失敗は帰納と演繹で説明できる

僕も新人の頃、全然仕事に慣れず大変な思いをしていました。皆さんも初めての仕事ってそんな感じだったのではないでしょうか。

そこで、初年度はとにかく帰納的に吸収するしかなく、場当たり的に仕事をこなしていました。

時が過ぎ、2年目に突入したある日、このままではいけないと思い、本を読んで学ぶことにしました。
本には、それはそれは先輩たちが間違っているのではないかと思わざるを得ないような内容が満載。

これで頭ひとつ抜きん出るはず、なんて期待と、これまでの先輩の指導は間違いだったのかと怒りのようなもので一杯になりました。そこで、それからというもの、本の理論を根拠に「できる大人」を演じていました。

はじめはうまくいっている気がしましたが、だんだんと理想と現実の狭間に悩むことになります。
「本にはこう書いていたのに」。これまでとはまた別のストレスと戦っていました。

そしてまた数年が経ち、ひとつ、大きなことに気づきました。

それは「目の前の現実を見ていない」ということ。そうなんです、いわゆる「頭のかたい人」になっていたのです。同僚からの評価も、きっとそうなっていたでしょう。

お気付きの通り、初年度は帰納的すぎて大変な思いをし、2年目以降は演繹的すぎて空回りしていたわけです。周りに業績を上げようとして読書をする人が少なかったからこそ、余計に自分を肯定しすぎていたからかもしれません。

6.思考を整理する

今ならこんな失敗はしなくなりましたが、帰納と演繹の二言だけで数年分の失敗とストレスを整理できるのかと思うと、少し複雑な気持ちです、、、笑(ただ、経験しなければわからないことだったのでこれは失敗ではなく財産だと捉えています。)

そう思えるのも、概念を知って整理することの素晴らしさだと思います。

帰納や演繹という考え方の枠組みを得ると、自分の思考に法則を見いだしたり、内省をしたりすることができます。

それをきっかけに「ではもっと現実を見よう」と次の行動を決定することができる。これが概念を得て思考を整理することの大切さではないでしょうか。

7.まとめ

帰納法を使わなければいけないとか、どっちのほうが優れていると考えるのではなく、ただ「知る」、そして活用しようとする、それだけでいいのではないかと思います。

「知る」だけで思考が構成され、体系付けられる。だから次のステップに進めるわけです。

ここまで本稿をご覧になった方の、ひとつの思考法として整理する一助になれれば幸いです。

参考文献:新井紀子(2010),『コンピュータが仕事を奪う』,日本経済新聞出版